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【システム開発依頼の失敗と成功】

  • ITC 中谷 正明

■はじめに■

昨今、縦割り行政の問題が取沙汰されています。情報システムも同じ様に、各行政組織は膨大な情報を持っていますが、横断的な繋がりが余り無く、必要な情報を収集するには、行政組織毎に確認する必要があります。一般市民としては面倒に思う事が多々あります。
  しかし、スピードが重要なビジネスの場では、必要な情報を必要な時に取り出す事が出来ないと、競争相手に先を越されてしまう事があります。今回は、システム子会社を持つ会社の商品設計支援システムの「システム開発依頼の失敗と成功」について書かせて頂きます。この会社は製品を設計する為にいくつかの部門を持っており、各部門毎に重要な情報を管理しています。これらの部門は関連性が強く、データの共有が必要ですが、各々が情報を管理しているため、必要な情報を一括して取り出すことが出来ません。まさに縦割り行政に通じるところがあります。
  また、この会社は年間に複数のシステム案件をシステム子会社に開発依頼していますが、完成したシステムの中には、要件を満たしているにも関わらず、十分に活用されないシステムも存在します。この様な無駄な投資を削減する為に、システム子会社への要件依頼の方法を見直しました。

■システム開発依頼の失敗■

ERP導入では、一般にソフトウェア開発フェーズでの管理業務は高い負荷ではありません。もちろん、ERPにアドオンで加える修正の製作量、ERPとは別のソフトウェアで作る画面や機能の製作量がリーズナブルな量に収まっているという前提です。通常のソフトウェア開発で行うのと同様に、製作する機能ごと、プログラムごとに明示されたWBSを作って進捗、検査、完了をチェックしていきます。
基本的にベンダーとの契約はソフトウェア開発内容が確定した時点で金額も確定します。このフェーズで仕様決定にまで遡る大きな変更が発生しなければ、ERP導入プロジェクトの予算管理はある程度の目途が着いたことになります。
開発が終わり、機能が揃った部分から、いよいよマスターデータの登録に入っていきます。マスターデータとは、会社の組織、社員、派遣者、客先、発注先、銀行口座、支払い条件など、一連の情報を指します。それらが揃うに従って、実データによるシステムの動き方を逐次検証して行きます。

■要件依頼方法の改善■

【分析】
  もっと効果のあるシステムの開発を行う為に、システム開発時の作業の分析を行いました。この会社の各部門はそれぞれ専用システムを所有しています。すなわち、各システムはその部門に必要な機能しか備えておらず、部門間の情報連携が十分に取れていませんでした。また、システム開発依頼をする側にはコンピュータシステムの開発に関する知識や経験があまり無い為、開発要望をシステム子会社のシステムエンジニアとの打ち合わせの場で決定していくという方法をとっていました。
  問題点としてあがったことをまとめると、
(1)互いに必要な情報を、各部門で管理しているためデータの有効活用をしにくい。
(2)システム開発の依頼内容を、打ち合わせの場で決定しているため、依頼漏れが多く発生する。
  と言う事でした。
【改善】
  今後のシステム開発・改善で、より効果の高いシステムを作るために、これらの問題を改善する事になりました。
  改善方法として、以下の案が挙がりました。
(1)現状の把握
  関連部門間で効率良くデータを連携するために、関連する「部門の業務」と「所有システム」を資料化(表・図化)し、本来あるべき姿を想像出来るようにする。また、今後のシステム開発・改善時に、「他部門との関連」や「無駄な作業の発生」を考慮し、より広い視野でシステム開発依頼を行えるようにする。
(2)依頼内容の資料化
  システムエンジニアとの打ち合わせ時に決定していた依頼内容を、打ち合わせ前にまとめて資料化する事で、依頼の抜け漏れを削減する。
(3)システムエンジニアとの打ち合わせ
  システム開発を成功させるためには、依頼者側とシステムエンジニアとの協力が不可欠である。システムエンジニアは業務内容について理解が浅いため、(1)(2)の資料を使用し「各関連部署の業務内容」と「開発を依頼するシステム要件」をリンクして理解できるように説明することに勤める。その上でシステムエンジニアからの意見や提案を聞く様にする。

■改善後のシステム開発依頼■

新規システムの開発を行なう事となり、まず部門内の要件を資料化し、部門内および関連部門でレビューを行い様にしました。この時、現状把握の為に作った、部門間の関連業務・関連システムをまとめた資料を使い、これまで見つける事が難しかった、リリース後に発覚するであろう追加要望や問題点を早期に発見する事が出来ました。
  また、システムエンジニアに明確な依頼が出来るようになった為、システムエンジニアから以前よりも多くの意見や提案を引き出せるようになりました。
  この結果、仕様確定後の仕様変更を削減し、システム開発を行った事で発生する事があった無駄な作業時間を無くすことが出来ました。

■おわりに■

  これらの資料は、システム開発時の参考資料(教訓)として使われる事になりました。今後のシステム開発・改善時に隠れた要件や問題点の早期発見をするために役立つと思います。また、これらの作業で深く思った事は、システム開発を成功させる大事な要素として、依頼する側の積極的な参加と、依頼される側のユーザ業務に対する理解(および興味)が必要だと思いました。

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