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「検証ユニット方式」の実践によるITC収益モデル例・3

<はじめに>
 これまでの考察で、ITCが企業と契約を結ぶに至るプロセスにおいて、われわれ“まいどフォーラム”が提唱する「検証ユニット方式」がいかに役立つか、その実践的手法について明らかにしてきた。
 前回は、「検証ユニット方式」実践の第1回転めに専門家派遣制度(各都道府県に設置された中小企業支援センター等が実施する助成事業)を活用し、より潤滑に契約獲得に結びついた事例を紹介した。
 今回の事例もまた、専門家派遣制度を活用した契約獲得例であるが、第2回転め以降に経済産業省の「IT活用型経営革新モデル事業」という別の公的な助成制度の活用を組み合わせて、顧客便益を大幅に向上させているところに着目いただきたい。
 毎度のことであるが、仕事の発端はささいなキッカケである。本事例(C社=小売業とする)は、ITCのY氏が、共通の知人であるVさんから、販売管理システムの刷新を検討しているC社のマネージャを紹介されるところから始まる。

<1回転めの経過>
 1回転めの留意点については、前回までの考察とほぼ同じであるので、詳しいことは省略するが、肝要なことはやはり、「はじめに成果ありき」を鉄則して、第1回転めにできるだけ相手にお金を使わせないことである。信用創造に重点を置く初期段階にあっては、特に相手が価値や意味を理解できない箇所にお金をかけさせるべきではない。
 本事例では、Y氏は専門家派遣制度の枠内で助言事業を行ったわけであるが、C社が新たに購入しようとしていたPOSシステムについて、C社経営陣の意思決定を覆す決定的なレポートを作成した。そのあらましは以下のとおりである──。
 C社はL社製のPOSシステムを採用していた。が、各端末がC社の直営する各店舗でスタンドアロンで稼働していたために、売上の情報を集めるのに、数年前まではフロッピーディスクを回収しなければならなかった。ここ2~3年は、売上情報をネット上で稼働する別のASPシステムに入力し直してサマリーだけは本社で把握できるようになったが、単品管理はできておらず、POSとは名ばかりになっていた。
 それでもC社は、新規出店のたびにL社製のシステムを購入していた。同じメーカーのもので統一しておくほうがなにかと安心だというのが経営トップの判断根拠であった。他メーカーのシステムが混在すると、予測不能の混乱が起こりそうで不安だというわけであるが、これがY氏の目には明らかに不合理に映ったのである。
 L社のPOSは、スタンドアロンで動いているのだし、導入年代が異なるためにソフトのバージョンがちがっているものもある。日々の売上実績はそもそも別のシステムに店長が手入力し直している現状では、他メーカーのシステムが混在したところで大した混乱が起きるはずがなかった。
 そこでY氏は、将来は全店の業績をネット上で即時に一元的に管理することを命題として、それが可能なシステムにリプレースすることをC社に進言した。そのニーズを完全に満たすシステムはその時点では存在しなかったが、開発できそうなソフトハウス(M社とする)はあった。うまくいけば節約効果は数百万円に上ることが素人目にも明らかであった。そこで、1回転めの検証ステップとして、まずC社でいちばん規模の小さい店舗にM社のPOSシステムを採用し、L社にこだわる必要がまったくないことを確認したのである。

<2回転めの経過>
 2回転めの留意点についても前回までの考察とほぼ同じである。すなわち、1回転めで得られた小さな信用と小さな報酬をテコに、もうひとまわり大きな信用と報酬につなげるという点である。
 1回転めの助言活動で、数百万円に上る目に見える節約効果を実現したY氏は、C社のニーズを完全に満たすシステムをM社に開発させることを提案することになるのであるが、このときにY氏は、経済産業省の「IT活用型経営革新モデル事業」(以後、単にモデル事業と呼ぶ)の活用をC社に勧めたのである。もちろんC社のうち誰ひとりとしてこのような助成事業について知る者はなく、はじめはいぶかしげな反応だったわけだが、コンサルタントであれば誰でもこのような中小企業支援策についての趣意は心得ていて、その活用を促進するミッションを負っているといえるだろう。
 Y氏の提案によれば、C社のニーズに完全に満たす独自のシステム──すなわち、グループとして運営する多くの店舗の稼働状況を、インターネットを介してリアルタイムに本部で一元的に管理できるシステム──を、新たにM社に委託開発すれば、満足度の低い既製のシステムを使うよりも劇的にコストが削減できるとのことである。しかも新たに開発するそのシステムは、ネットやモバイルを活用した新規性の高いシステムであったため、その開発費について国から助成金が出るかもしれないとなれば、C社にとってはたいへん魅力的な提案である。
 2回転めの検証ステップとして、モデル事業に応募する前提条件として、Y氏の助言に従えば本当にC社のニーズを満たすシステムが開発可能なのかどうか、M社にプロトタイプを作成させて実地でテスト稼働させる必要があった。この過程でY氏の“まいどフォーラム”を中心としたITCの人脈(ITCには大別して経営系とベンダー系があるが、そのうちベンダー系のITC)が役に立ったことを書き添えておく。

<3回転めの留意点>
 モデル事業に応募するための事業計画を作成する頃には、Y氏の助言に寄せるC社の期待はかなり大きなものになっている。ただでさえ数百万円の節約効果のあるシステムが、意外に低い費用で新たに開発できることがわかり、しかもその半分を国が助成してくれるというのだから当然といえば当然である。逆にいえば、Y氏としては、この期待をここで裏切るわけにはいかないことになるから、モデル事業として採択されるかどうかが3回転めの肝となる。
 通例の「検証ユニット方式」でも、ちょうど3回転めあたりが「経営戦略」であるとか「ビジョン策定」という意識を経営者側に抱かせる段階であるから、モデル事業応募を名目として、ここで事業計画作成に着手できることはY氏としても都合がよい。しかし、計画作成は必ずしもY氏の得意とするところではないため、またここでも“まいどフォーラム”を中心としたITC人脈が活躍することとなる。公的機関(この場合は近畿経済産業局)向けの書類は、書式が煩雑であったり、言い回しが微妙であったり、数字が厳格であったりするために、慣れていないと摩擦の元となるのである。そこでY氏は“まいどフォーラム”の提唱する「ちょいサポ」(それぞれのスペシャリストが自分の得意な分野に関して少しだけサポートするという意味)という仕組みを使って、別のITC(公的支援活用を得意とする)に応援を依頼したのである。

<3回転めの検証>
 結果として、C社の事業計画は、競争率5倍以上の狭き門をくぐってめでたくモデル事業として採択され、Y氏はC社の期待に応えることができた。モデル事業に値すると進言したY氏の仮説が、公的機関によって検証され、実証されたわけである。ではここでY氏はお役ご免となるかというと、もちろんそんなことはない。近畿経済産業局には事業の進捗を報告するための書類は、Y氏とその仲間のITCの助言がなければ、とても中小企業家自身の手に負えるものではないし、開発委託先ベンダーとの交渉も簡単ではない。今後展開する大きなプロジェクトにとってY氏は必要不可欠な存在となったわけである。

<結論>
 モデル事業として採択された事業計画に基づいて、C社のプロジェクトが進行していくわけであるが、このモデル事業が完結するまでが「仮説-検証サイクル」の4回転めにあたるといえる。
 さらに、モデル事業終了後も、このモデルを世間に広める(C社の知的財産となったモデルを他社向けにカスタマイズして販売)というプロセスがあり、それが5回転めになる。
 このようにY氏は、小さなきっかけから始まり、だんだんと大きな回転になっていくプロジェクトにおいて、各フェイズで立てた仮説が絵に描いた餅にならないように常にコーディネイトし続けるミッションを負うことになるわけである。つまりY氏は、「検証ユニット」の描く成功パターンどおり、めでたくC社と長期に及ぶ顧問契約を締結することができたばかりか、POSシステムの有効活用を図りたい他社からも声のかかるコンサルタントとなったわけである。
 本事例は、公的な中小企業支援施策に関する若干の予備知識があれば、それを「検証ユニット」にうまく乗せるだけで、実績や信用に乏しいITCであっても、よりスケールの大きいプロジェクトに参画できるという好例を示すものであろう。

ITコーディネータ/永田祥造

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