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「バンドマスター方式」によるITコーディネータ収益モデルの検討

<はじめに>
クライアントの企業規模が大きくなると、ひとくちにIT化といってもその範囲は上流から下流まで多岐に及ぶ。大きくは経営寄りのもの、システム寄りのものがあり、さらにシステム寄りのものには、SE寄りのものからプログラマー寄りのものまである。経営寄りのものでは財務系のもの、マーケティング系のものなど、とてもひとりの専門知識では賄えない広さと深さがあるといってよい。そこで、比較的大型の案件を処理するにあたり、ITコーディネータの横のつながり、チーム連携が重要になってくるのである。
 いっぽうITコーディネータは、その資格維持の仕組み上、協会に認定された「届出組織」というグループ単位で活動していることが多い。セミナーや勉強会は届出組織によって主催されることがほとんどなので、大半のITコーディネータは、なんらかの届出組織に所属し、そこで顔見知りになり、ビジネス上の連携が始まりやすいのである。
 コンサルタント間の連携については、税理士と社会保険労務士、司法書士といった、いわゆる士業を営む専門家同士が組合を作ったりして連携するケースが珍しくない。相互補完的な業務を行うために、クライアントにしてみれば、ワンストップでサービスを享受できるメリットがある。
 ところが、それぞれが独立したコンサルタント同士の連携はうまくいかないケースも多々ある。皆がプライドを高く持ち、専門性の高い仕事をしている有能な個人のため、それぞれがマイペースであり、お互いがお互いの専門分野を理解できず、しかもそれぞれが自分の利益を優先しがちだからである。極端に言えば呉越同舟があたりまえ、異なる流儀同士が衝突しないほうが不思議だともいえる土台があるわけである。
 そこで、このITコーディネータ同士の不安定結合状態を解決する目的で、われわれ“まいどフォーラム”が試験的に取り組んでいるのが「バンドマスター方式」による組織連携マネジメントである。
<バンドマスター方式の定義>
「バンドマスター」とは、ジャズでよく使われる用語で、略して「バンマス」という。同じバンドでも、ロックバンドでは使われることはないのだが、要するにバンドを仕切るリーダーのことである。特にここでは、即席ユニットで演奏されるジャズライブをイメージしていただきたい。ついさっきまでは赤の他人同士だったサックス奏者やドラマー、ピアニストでも、集まったとたんにプレイできる、そのイメージである。「お互いにプロなんだから好き勝手に演奏してもいいライブになる」とはいかない。たとえ即席とはいえ、やはりバンマスを決めて、どのパートを誰がどんなふうに受け持つかについての仕切りが必要である。それがなければ「個別最適の積み上げが全体最適になるとはかぎらない」という結果に終わるであろう。
 ITコーディネータには、大手企業に勤務する企業内コーディネータや、税理士や中小企業診断士を本業とするフリーのコーディネータ、システム開発やホームページ制作の会社を経営するベンダー型コーディネータなどのタイプがあり、勉強会の中で緩やかな連携を保っている。中堅企業からシステム導入の相談を受けたとしても、単独では処理できないので、数人のコーディネータに声をかけ、それぞれの得意分野を担当してくれるように依頼することになる。そこで「誰がバンドマスターになるか」についての完全合意が重要になるのである。
 結論から言えば、バンドマスターは、企業からファーストコンタクトを受けたITコーディネータがなるのが原則ルールである。全責任を負う自信がないので放棄する場合は別だが、自らが営業活動を行い、クライアントに信頼され、某かのプロジェクトを託された最初のITコーディネータこそが、そのプロジェクト全体を最優先してコントロールする権利をもつと見なすわけである。
<バンドマスター方式の実践のために>
バンドマスター方式の考え方をひとことで表すなら、「営業力があって、お客さんを見つけることができて、仕事を取ってこれるITコーディネータがいちばん偉い」である。どれだけ専門知識が豊富でも、マーケットが見つからなければ収益は上がらないのであるから、この原則はコンセンサスを得やすいと思われる。ただ、営業力とリーダーシップは比例しないので、バンドマスターになったITコーディネータが必ずしもリーダーとして最適ということにはならないかもしれないが、そのリーダーシップの欠如をチーム全体で補おうという姿勢が大切である。報酬に関わる金銭トラブルも大いに予測されるので、バンドマスターの頭越しに勝手な取引や提案をクライアントに対してしないことを盛りこんだ契約書にサインしておくことが欠かせないであろう。
 バンドマスターに求められることを整理してみると、お客さんを見つけたらまず、自分の所属している組織やその他の人脈から、プロジェクトメンバーを選定し、受託業務を遂行できるワークフォースを揃えること。集められた各メンバーが自身の指揮権に従う旨の契約を締結すること。この時点で、メンバーの貢献度合いに応じて、ある程度の報酬分配方針を明らかにし、造反が起こらないようにしておくこと、等である。
 予算が数百万、数千万に上るシステム導入案件が、ITコーディネータ個人に単独委託されることは考えにくく、受注窓口としては、法人格のあるITコーディネータのグループ(NPO法人など)が想定される。確かにバンドマスターは、プロジェクト毎に招集される即席ユニットにおいては全責任者なのであるが、対外的な信用という意味では、組織としての最終責任者はやはりその法人の代表である。つまり、いくら緩やかな連携を前提とする即席ユニットといえども、法的根拠のある連帯責任を負っている社会人の集まりであることが絶対条件であり、バンドマスターを適切に指導育成する責務が、法人の代表者にあることは言うまでもない。
ITコーディネータ 永田祥造

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