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勤怠管理システムの選定とコスト削減

1.はじめに

数年前からの不況で、各企業も財務的に苦しくなり、ITベンダーやメーカーなども苦境に立たされています。こんな時、2010年4月1日からの労働基準法改正やIFRS(国際会計基準)適用は、ITベンダーにとって特需なのかもしれません。反対に各一般企業にとっては、痛い出費につながると思われます。

2.序論

昨年、A社の勤怠管理システムの老朽化に伴い、システムの更新を行うため選定業務を行う事となった。また、2010年4月1日から労働基準法改正もあり、選定は緊急の業務となりました。

A社は現在、クライアントサーバー型の勤怠管理システムを導入しており、当初は単純に現在のシステムの後継バージョンを導入しようという動きがありました。しかし、この不況のなか、コストをあまりかけたくないという背景もあり、他メーカーの勤怠管理システムと比較検討を行うことを提案し、選定を行うことにしました。

現在のA社は本社の他に複数の子会社、支社があり、また多くの店舗を運営しているため、勤怠管理は複数の地区からの打刻と、複数の勤怠区分を管理する必要がありました。打刻システムも3種類のシステムを利用しているため、勤怠システムへの取り込みに時間がかかるという問題もあり、また現行の業務システムが勤怠データをスムーズに取り込むことが出来るようにする事も重要な課題のひとつでした。

これらの要件をふまえながら、新規に導入する勤怠管理システムの選定を進めていく事になりました。

3.本論

【情報収集】

勤怠管理システムの情報を集めていくと、勤怠管理システムと一言に言っても、複数のタイプがあることがわかりました。従来からある紙を使ったタイムレコーダー、クライアントサーバー型、イントラ型、最近流行のクラウド等です。メーカー側の対応もそれぞれで、値段が高いといえばどんどん概算見積もりを下げるところもあれば、大手メーカーでは、内容も教えずに3千万円という高額な金額を提示してきたりもしました。ただ、どの勤怠管理システムも基本的には同じ様な機能を備えていることがわかりました。また、各社の大きな違いは、自社でサーバーを持つかどうか、そして打刻の方法にあり、これらは初期投資にも大きな影響を持ってくることがわかってきました。

A社は複数の支社や子会社、そして店舗を運営しているため、遠隔地でも利用できる様にインターネット等を利用して打刻情報を収集するシステムを中心に比較をしていくことにしました。

【コスト比較と検討】

比較は一般的な方法である比較表を作成し、重み付け評価を行いました。業務との適合性はもちろんのことですが、重要課題であるコスト削減を実現できる方法と選定が、今回の選定作業の焦点となりました。これらを踏まえて、情報収集した8システムの中から、クライアントサーバー型でインターネット打刻が出来る勤怠管理システムを中心に、候補を3システムに絞りました。しかし、もっと安いシステムがあるのではないかという話が出てきました。コストの中で一番目を引くものは、初期投資にかかるコストであるため、初期導入コストが低いクラウドや、機能を落とした廉価版のようなシステムがそれでした。これらが候補から外れているのはなぜか?という内容でした。

確かに、自社サーバーを必要としないクラウド型は、初期投資をあまり必要としません。しかし、ランニングコスト的に見れば、5年利用で、自社サーバーや情報システム人員が必要なクライアントサーバー型のコストをも大きく上回ります。またいくらか機能を落とした廉価版のようなシステムでは、人的な作業が増加するため、人事部門の人的コストが増大し、人的ミスのリスクも増える可能性があり、あまり薦めたくないシステムでした。これらの内容を勤怠管理システム担当部門に伝え、当初選定した3システムの中で、検討を行うことにしました。

【決定までの流れ】

現行業務との適合性と、概算コストを踏まえて選定した3システムを供給するベンダーとデモを行いましたが、ここで予想外のことが起きました。概算見積もり時にかなり値引きをして頂きましたが、各社ともにさらに大幅な値引きをしてきたのです。これも不況のせいでしょう。実際にデモを行うと、多少業務に適合しないシステムもありましたが、全システムのデモを終え、最終的には現在導入している勤怠管理システムの後継バージョンを選ぶことになりました。

決定に当たり大きかった事は、初期投資やランニングコスト面で他社より安く抑えられること、そして現在使用している勤怠管理システムとほぼ同じオペレーションで使用できることでした。

4.結論

結果的には、当初考えていた現在の勤怠管理システムの後継バージョンを導入することになったため、選定する時間とコストが無駄になったかもしれません。しかし、なにも検討せずに導入した場合、その中に潜むリスクを察知することが出来ず、またより適合性の高いシステムを見逃す可能性が高くなります。結果がある程度見えてはいましたが、やはり比較検討は行う必要があると考えます。

 ITC 中谷 正明

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