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IT活用マーケティングの潮流2011

ネットマーケティングの質的潮流を俯瞰するために、2011年に入ってからの3大キーワードを次のように整理してみた。

その1=スマホ
アップルの「iPhone 4」が発売になったのは2010年6月。アンドロイドOSを搭載したスマートフォンとしては、2010年4月にNTTドコモからXPERIA(SO-01B)が発売されている。こうして2010年中には各社から機種が出そろい、2011年からがいよいよスマートフォン(以後「スマホ」と略す)の本格的な普及期のはじまりだと言える。

その2=ソーシャル
映画「ソーシャルネットワーク」の全国ロードショーは2011年1月15日からだった。世界最大のSNS「Facebook(フェイスブック)」誕生の物語である。この映画の封切りをひとつのきっかけとして日本国内でもフェイスブックユーザーが激増した。つまり、ソーシャルメディアの本格的な普及も2011年から始まると言える。

その3=ムービー
YouTube(ユーチューブ)やニコニコ動画は、2006~07年ごろにはすでに相当普及しており、「スマホ」や「ソーシャル」の普及とはタイミングが一致していないように見えるが、それでも、2011年の大きなトレンドとして「ムービー」が加わる。ムービーの楽しまれ方が先の2つのトレンドによって大きく変質し、新たなステージでの普及が始まっているからである。例えばスマホを使った動画配信の手軽さには驚くばかりである。昨今のスマホには動画を撮影できるカメラがあたりまえのように標準装備されていて、静止画カメラとワンタッチで切り替えられる。撮影したら直ちにその場でYouTubeやらFacebookやらにアップロード、即座に公開できるのである。

 では、スマホ、ソーシャル、ムービーの三者が、それぞれどのようにマーケティングに影響しているかを見てみよう。まず、スマホの出現。これは、インターネットを利用してウェブサイト等にアクセスする人口を飛躍的に増大させる。「ガラケー」(ガラパゴス携帯の略)と総称されるスマートフォン以前の旧式な携帯電話は、ケータイ専用サイトの参照やメールの送受信には使えても、パソコンと同等のネット利用にはほど遠かった。それが、スマホのウェブアクセスはパソコンと遜色ない。
 次にソーシャル。日本で従来から普及していた「ミクシィ」と、インターナショナルな新興メディアの「フェイスブック」が比較され、「実名か匿名か」といった区分けがなされるが、ソーシャルメディアの特質は「実名制で顔が見える」にある。情報発信者が特定されることで、そこに責任がついてまわる。それがソーシャル(=社会的)たるゆえんなのである。頭に帽子、目にはサングラス、口にはマスクで変装し、年齢も性別もわからない人間がうろうろする街が健全かどうか想像してみるとよい。これまでのネットは、匿名制があたりまえだったために無秩序が大きく許容される場だったのである。そこに、まるで独立行政区のように責任ある個人の社交場が作られた。帽子にサングラスにマスクの連中と比べたら、ものすごく安心できる紳士淑女(実際にはそうではないが単なる比喩として)みたいなものであって、ユーザ同士の社会的関係性が成立している。
 ムービーもまた、たらす文化の変質は「ネット活字離れ」である。単に「活字離れ」と言うと、新聞や書籍などの紙媒体を読まなくなったことを指すので、ここでは「ネット活字離れ」と呼びたい。ムービーがパソコンやスマホにあふれ出すと、ユーザがテキスト文章を読まなくなることは想像に難くあるまい。電車で移動中、スマホで暇つぶしがてらネットにアクセスするユーザが激増しているが、指を使ってページをめくったり文字サイズを調節するの片手では面倒だし、そもそも4インチほどの画面で長文を読むのは苦痛である。ムービーならイヤホンで音声を聞きながら画面を眺めておくだけ。しかも摂取できる情報量はテキスト文章の何百倍にも達する。
 以上のように、スマホはまずネットの裾野を爆発的に広げる。無秩序にぶよぶよと肥大する方向へ進むベクトルに対し、ソーシャルは社会的関係性の範囲でクローズドなスペースを現出させるベクトルである。つながりがあるあるぶんだけ情報の伝わり方が強くて太い。どちらがどうということではなく、マーケティング戦略を策定する上で、認識しておくべきトレンドを整理しているわけであるが、ムービーはどちらのベクトルに対しても、伝達できる情報の質と量も飛躍的に向上させうる。

 これらのことから、今後のマーケティング戦略をどのように組み立てていけばよいのであろうか。まずわかりやすいのは活字から動画へのシフトである。中小企業でも大企業でもこれは当てはまるしすぐに実践できる。わかりやすく言うなら「文章を書く時間を減らしてカメラのまえでしゃべる時間を増やす」といった転換である。消費者は画面を眺めて音声を聞くことはしても、活字を読んではくれないのだと認識して商品プレゼンのウェブページを演出することである。テレビのコマーシャルは15秒。パッと見の印象で興味を引くのが目的なら長さはそんなもんだろう。しかし、消費者は電車の中で暇つぶしにその動画を眺めているかもしれない。そこで興味をつかんだら次は3分か、5分か、そんなことに気を使う必要が出てくる。
 そのうえに、匿名無責任から責任制個人へのシフトである。ソーシャルが文化として浸透しはじめると、わかりやすく言うなら消費者全体が「責任者は顔を見せろ」モードになるということである。それが風潮になると、いくら有名ブランドのロゴを並べて「安心・安全」を謳ったところでパワーに欠く。食品ならば「どこの誰が作ったか」が問われる。産地はどこで原料が何でというデータが重要だった時代をさらに通り越して、「どんな顔をした人がどんな想いで作っているか」まで見られるようになる。言動を通して人生観までが伝えられるようになる。商品に込めたバックグラウンドストーリーが決定的な意味をもつようになる。責任者が「イケメンか否か」までが売れ行きを左右するようになる。ソーシャルな個々人のあいだで信用力の指標になるのは「いいね!」である。「いいね!」の伝播力がセールスパワーと一致してくるのだ。
 そして最後に、以上のことが総合的に相まって、「手のひらオンデマンド」へのシフトを意識する必要性が高まっている。消費者は安心や安全、信頼感を「いいね!」に求める。身近な友達が「いいね!」と言っているかどうか、肌身離さず持ち歩くスマホで逐一確認するのが強迫的なまでの習慣になる。自分が今日どこでランチを食べたらいいかまでスマホで得た情報で決める。スマホの中にコンサルタントやカウンセラーや占い師を準備しているようなもので、スマホが個人の意思決定のための最重要アイテムになる。手のひらの上で起こる意思決定のタイミングでどれだけスマホに登場できるか、それが究極のオンデマンドであり、そこに意識を傾けたマーケティングが重要性を増してきているのである。

byITコーディネータ:永田ショウ造@まいどフォーラム(2011,03,26)

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