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QMに関する一考察

1. 序論
 フォルクスワーゲン社のゴルフという車の品質と、スズキのワゴンRという車の品質は、どちらが高いと言えるだろうか。価格やブランドの問題ではない。答えは「どちらの品質も高い」といえる。なぜなら、どちらもよく売れているからである。
 品質管理の品質とは「品物の質」であるので、従来の品質管理では、製品の形状、性能、信頼性、外観などが品質と考えられてきた。しかし、時代の変化とともに、品質のとらえ方も変ってきた。
 いまや商品の品質において、顧客が満足するレベルにあるのは当然であり、それ以外に価格、納期、アフターサービス、環境、それらを提供する業務プロセスまでを含めて「品質」とするようになってきた。
このため、品質管理という英語もQC(クオリティー・コントロール)からQM(クオリティー・マネジメント)と時代の変化とともに、変わってきた。
 この論稿では、品質管理(QM)について考察していくことにする。

2. 本論
 はじめに「管理(マネジメント)」について考えてみたい。管理とは、「自分の意思で良かれと信じ、物事をいろいろ変えていくこと」ということがいえる。品質の評価はお客様が決める。つまりは他律である。しかしその品質を生み出している自分の仕事のやり方(プロセス)は、自分で変えることができる。つまりプロセスを管理すれば品質はよくなる。
PDCAサイクルというものがあるが、これは、以下のことを指すのは、ご存知のとおりである。
計画(Plan)-実行(Do)-評価(Check)-処置(Action)のプロセスを順に実施する。これにより品質の維持、向上および継続的な業務改善(KAIZEN)活動を推進していくマネジメント手法のことである。
そして、このサイクルをスパイラルアップしていくことが肝要である。
しかしながら、この中で処置というActionがわかりにくさを与えている。どういうことかといえば、計画(P)-実行(D)とサイクルを進め、評価(Check)をすると、不具合が発生したとする。当然、原因を追究して対策案を立てる。つまりPである。その対策案を実行(Do)し、再発しないか評価(Check)する。再発していなければ、このサイクルを続ける。つまりこれでは、処置(Action)の位置づけがあいまいになってしまう。極論すれば、Aのプロセスが無くてもPDCのサイクルだけをまわせばよいことになってしまう。
 だが、人間は計画をたてて、それを実行することは頭ではわかっていてもなかなか実際に実行することは難しい生き物である。どうすれば、計画通りに実行することができるだろうか。そこには、モチベーションが必要であり、そのモチベーションが実行するための動機付けになる。この動機付けを「心のAction」と私たちは呼んでいる。「心のアクション」が実はPDCAサイクルのエンジンになるのである。これがないと、サイクルが回らない。やらされ仕事になってしまう。だからPDCAサイクルはAPDCサイクルと考えて回しはじめるとよい。いったん回りだすと、あとはグルグル回転していくので、APDCサイクルと考える必要はなく、PDCAサイクルと考えてよい。

 さて、QMすなわち、クオリティー・マネジメントであるが、日本語にする場合どう和訳すれば良いだろうか。直訳では「品質管理」となるが、以下の四つが考えられる。
1) 品質を管理する。
2) 品質の管理をする。
3) 品質が管理をする。
4) 品質で管理をする。
はじめの「品質を管理する」とはどういうことだろうか。その企業の商品やサービスの品質レベルを、顧客が満足する範囲内に納め、世の中に提供する、ということであろう。しかしながら、品質は顧客が満足するレベルとはいえ、それを決定しているのは、しょせんその企業である。企業が決めたレベルでの品質といえる。
次の「品質の管理をする」では品質そのものを管理することになる。一番目の「品質を管理する」と同じレベルである。
では、三番目の「品質が管理する」とはどういうことだろうか。品質という金科玉条のものがその企業にあり、それに見合った商品やサービスを世の中に提供するということになる。はたしてその品質は世間から認められているものであろうか。また品質過剰に陥ってしまうこともありえよう。
実は、QMとは「品質で管理をする」のである。ここにQMの本質がある。
 その商品やサービスの品質レベルを決めるのは、顧客である。いくらその企業が「品質は十分にある」と考えていても、顧客がその品質に満足しなければ、意味はなくなる。つまりQMとは「顧客が満足する品質で管理する」「顧客が満足する品質によって管理する」ことなのである。
 その品質管理は誰が行うのか。もちろん社員全員である。何で管理するのか。品質(仕事のできばえ)で管理する。すべての仕事に品質がある。
そしてその品質はどうやって捉えるのか。それはデータに基づく事実である。つまり誰もが納得するデータで捉える必要がある。その道具(ツール)が「QC七つ道具」なのである。そしてKAIZEN活動していくのは、プロセス(仕事のやり方)が対象なのである。

3. 結論
心のアクション(A)から始まり、それをエンジンとしてAPDCサイクルからPDCAサイクルをスパイラルアップするようにまわしていくことがQM(クオリティー・マネジメント)である。すなわちKAIZEN活動である。
目指すべきKAIZEN活動には、3タイプある。第一が「再発防止型活動」。現在悪い状態があるので、速やかに良い状態に直したい。原因を追究して対策を打つ。
第二が「未然防止型活動」。現在は悪い状態ではないが、それは偶然ではないか。いつ悪い状態になるかもしれないから、今のうちに安定する状態にしておきたい。経験やカンが必要である。第三が「課題達成型活動」。現在は安定した状態であるが、もっともっと良くしたい。これには新しい発想が求められる。
APDCが回せる人は、常に「やってみよう」と言う。できない人は「私には無理だろう」と言う。できる人は常に「難しいが、可能だ」と言う。できない人は「可能かもしれないが、難しすぎる」と言う。できる人は常に「障害点の解決法」を考える。できない人は「問題点を指摘する」。
ぜひとも、APDCが回せる人間になりたいものである。
ITコーディネータ 大森 勉

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