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テーマ「中小企業におけるBSC作成のポイント」

1.はじめに

1-1.なぜ 今 BSCなのか?
 最近、JALの経営危機が大きな社会問題になっている。一方、BSCのモデル企業であるサウスウエスト航空は、厳しい経営環境の中で、比較的経営が安定していることで有名である。サウスウエスト航空は、わかりわすい戦略マップを作成するとともに、重要成功要因として、①国内短距離直行便 ②機種の限定 ③サブ空港の活用などをあげている。さらに、人材採用にあたっては、サウスウエスト航空の企業理念である「ユーモア」感覚のある人を優先的に採用するなど、人材育成を含めてバランスのよい経営を実施している。 また、1マイルの運行コストを比較すると、JALはサウスウエスト航空の数倍にもなり、JALの経営危機の各種要因が、サウスウエスト航空では、すでに、解決されているようにも見える。
 このように、BSCでわかりやすい戦略MAPを作成することによって、会社の方向性が共有化でき、社員が自分のなすべきことが明確になって、全社一丸になって活動することが可能であり、最終的には事業収益につながってきているように思われる。

 
2.中小企業におけるBSC活用事例

 
 BSCは、当初、大手企業が競って作成していたが、最近は、公共や病院が採用しはじめている。さらに、中小企業においても数多くの企業が作成を行ってきている。そこで、私が係わった中小企業におけるBSCの作成事例を紹介する。
2-1.企業概要 A社
[業種] 製造業 
[従業員] 10名 
[特徴] インターネットを活用した製品の受注が多い。
2-2.BSC作成ステップ
 BSCを作成するために、A社では12回の会合を実施し、下記ステップで実施した。
・企業理念の確認(社長が事業を継続していくための普遍的な価値観)
・事業ドメイン設定(ターゲット、ニーズ、ノウハウの特定)
・SWOT分析(強み、弱み、機会、脅威の特定)
・クロス分析(打ち手、戦略、手段の洗い出し)
・戦略MAP作成(財務、顧客、業務プロセス、人材育成の視点による戦略目標の可視化)
・スコアカード作成(戦略目標の進捗を評価するための評価指標の作成)
・アクションプラン作成(評価指標を達成するための具体的な活動の特定)
・評価指標のトレース(評価指標の進捗トレース)
2-3.事例企業におけるBSC作成で工夫した点
2-3-1.社長とのコミュニケーション方法について
 A社では、すでに、経営理念は設定され、毎朝朝礼で唱和されてはいたが、先代の社長が設定した経営理念のため形骸化している面があった。そこで、現社長に経営理念の再構築を求め、新しい経営理念を設定してもらった。次に、新しい経営理念を基に、3年先の事業ドメインを社長と個別に打ち合わせを行い特定した。さらに、事業ドメインから戦略MAPの作成を行った。ただし、社長には、財務の視点と顧客の視点だけを特定してもらうようにした。
2-3-2.従業員とのコミュニケーション方法について
 戦略MAPの業務プロセスの視点と学習の成長の視点に関しては、社長が作成した財務の視点と顧客の視点の戦略目標を受けて、従業員だけでワークショップを行い特定した。最初、我々に対する警戒感が強く、発言を引き出すことが出来なく困ったが、1日中製造現場で立会い、従業員の方の作業環境や作業内容を実感した結果、従業員の方も、心を開いて議論に参画してくれるようになった。
2-3-3.評価指標のトレース方法について
 当初、評価指標のトレースに関しては、月1度の会議で実施していたが、あまり活動には結びつかず、評価指標の進捗も芳しくなかった。そこで、月目標を日別に展開し、日別で管理できる管理帳票を作成した。毎朝の朝礼で各従業員から各評価指標の進捗を発表してもらうことにより、徐々に活動に結びつくようになった。
 また、アクションプランの中に整理整頓があり、毎朝 10分間エリアを決めて社員全員で整理・整頓を実施したところ、見違えるように工場や事務所がきれいになってきた。

 

3.終わりに

3-1.中小企業におけるBSC作成のポイント  
3-1-1 戦略MAPはトップとボトムの両方から作成
 日頃、現場業務に忙しい従業員に、いきなりドメインやSWOTで経営者の立場で考えて下さいと言っても、意見が出てこないのが当たり前だと感じた。「ドメインや財務の視点等は経営者が設定すべきものであり、それを受けてアクションプランを作成していくのが従業員の役割である」と、定義する方がスムーズに作業が進むように感じた。
3-1-2 戦略目標は10個以内
 当初、戦略MAPの戦略目標が20個程度あり、戦略MAPが非常に複雑でわかりにくくなっていた。そこで、戦略目標にあがっている内容を、戦略目標、重要成功要因、アクションプランに分類し、戦略目標だけを戦略MAPに記述するようにすると、10個程度まで減少し、非常にわかりやすい戦略MAPになってきた。
3-1-3 評価指標の目標は従業員の言葉で設定
 評価指標や目標値に関しては、従業員が発した言葉を採用して設定するほうが、具体的な活動に繋がるケースが多い。たとえ、戦略目標の評価指標として適切でない場合もあるが、実際に目標を設定して、活動して、成果を挙げていくプロセスを学習することにも意味もあり、できるだけ従業員の言葉で設定する方が有効であると感じた。

以上
ITコーディネータ  清水俊光

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