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中堅・中小企業におけるCIOとしての役割とは

■はじめに
 CIO(Chief Information Officer:情報化担当役員)という機能・人材は、大企業においては位置づけられ機能しているが、中堅・中小企業においては、存在していない企業や存在していても十分機能していない企業が多いのが実状である。しかし、今日、中堅・中小企業においても競争力を強化し勝ち残っていくためには戦略的なIT活用は必須であり、それを推進する人材も必要不可欠になってきている。
そこで、CIOとはどのような機能を果たさないといけないのか、そのポイントについてCIOを育成する研修の講師を担当した経験から説明したいと思う。

■CIOの役割
 CIOとは、Chief Information Officerの略で、最高情報責任者、情報化担当役員と訳されます。これまで経営者や役員はITについてわからない人が多く、また、情報システムを担当する責任者は経営のことがわからないという状況であったが、今日、戦略的な情報化の重要性が高まり、経営と情報化の両方がわかり戦略的情報化を推進統括する人材の必要性が益々高まっている。それは大企業のみならず、中堅・中小企業においても、競争優位を保つための経営戦略・経営改革のための戦略的情報化が重要となってきており、これを実行推進できる人材がいない現状から、その必要性が益々高まってきている。
では、CIOとはどのような役割をもつのだろうか。大きく次のように考える。

1.戦略的情報化は経営戦略ありきである。よって、経営戦略策定を経営者とともに
  実施する。その際、どこをIT化すれば、その成果目標達成に最も効果を発揮するかを
  検討する。
2.策定された経営戦略に基づき、戦略的情報化を策定する。
3.策定された戦略的情報化企画に基づき、プロジェクトとして計画から実行、そしてIT導入
  までマネージメントを行い、導入後も成果モニタリングを通して、企業が継続的成長発展
  をするようにPDCAサイクルを回すように推進する。

では、それぞれについて、方法論やスキル等の詳細はまた別の機会にするとして、ポイントを以下に述べる。

■経営戦略策定
1.成功の3条件
 会社が成功するためには、3つの条件があると考える。第1は会社の目標をしっかり定めることである。どういう会社を目指すのか、会社の成し遂げたいこと、ビジョンを描くことである。売上や利益目標など具体的に会社の目標を指し示すことが重要であり、経営者が示すべき目標である。

 第2は会社の現状を認識することである。現在、会社はどのような状態にあるのか、会社の強みは何か、弱みは何か。また、外部の環境変化により予想される機会はどんなものがあるか、逆に脅威となるものに何があるか。会社の内部環境・外部環境を分析することである。以外と自社の強み、弱みはわかっているようでわかっていないことが多い。あまりに近すぎて当たり前になっているので、それが他社から見て強みであっても、中からは気づかないことが多いものである。

 第3は目標へ向かう熱意・情熱である。いくら目標があっても、社長以下全社員がそこへ向かう熱意・情熱がなければ成し遂げられない。社長だけがあっても、あるいは社員だけがあってもできない。全員が目標を達成しようという熱意・情熱を持って取り組まなければならない。
これが成功するための3条件である。このうちのどれかひとつが欠けても成功することはできない。

2.4つの合意形成
  3つの条件が揃ったら、社長と社員全員が合意形成することが大事である。その大事な合意形成に4つあると考える。
 1つ目は目標である。社長も社員も全員がその目標を自分の目標として捉え、全員で向かうべく合意することである。
 2つ目は現状認識。会社の現状は「?である」ということを全員で正しく認識することである。
 3つ目は目標を達成するために、あるべき姿、達成すべき課題である。経営目標を達成するためには「?するべき」をしっかり定め、合意することである。
 4つ目はそれを実現するために「?する」という行動計画である。「?するべき」を掲げただけに終わらせないように、具体的な行動計画を立てて全員で合意することである。
 この4つをまとめたものが経営戦略企画書である。

 CIOの役割は、この3つの条件と4つの合意形成による経営戦略策定において、常に参画し何のための情報化であるかを十分認識し、情報化により最大の成果を挙げられるようにIT知識を踏まえ、提言していくことにある。ここをポイントとしておさえていないと何のためのIT化がわからなくなり、折角作っても経営に役立つシステムとならない。そのために常日頃から会社の状況を認識するとともに、経営とITの両方に関しての知識や世の中の動向について学習研鑽する必要がある。

■戦略的情報化企画
 上記により策定した経営戦略企画書に基づき、次に戦略的情報化企画を策定するのであるが、では、戦略的情報化とはどの様に考えればよいか。
それには、それぞれの企業のIT化のレベルによるが、まず、ITが動かないレベルであれば正しくシステムが動くレベルにしなければならない。実はまだまだ中堅・中小企業においては、システムが動かない、一部しか使っていないという企業が多くある。そのような企業は、まず最低限、システムが正しく動くレベルにしなければならない。次に業務を効率化するというレベルである。業務が効率化され人件費などコストが削減されるという効果を生むレベルである。
しかし、周りの企業も同じようにシステム化を行っている今日では、業務効率化に留まらず、業務改革と一体となった情報化が重要なのです。本来、あるべき業務プロセスの実現を促し、支援するためのIT活用です。業務改革とITは別々になされるものではなく、一体となってこそはじめて実現されるものです。
そのためには経営目標実現のためのあるべき業務プロセスをトップダウンで設計していかなければなりません。それをITによりスピーディに、より低コストに実現するのです。
よいシステムとは経営目標の達成に役立つシステムであり、経営課題の解決を促進し支援するシステムです。そして、経営目標に至る、あるべき姿や経営課題解決の達成度合い、指標をタイムリーかつ正確に捕捉するシステムなのです。

■プロジェクトマネージメント
 戦略的情報化企画が策定できると、それをプロジェクトとして計画から実行を行い、ITシステムの開発から本番稼働まで、目標を達成できるようにマネージメントし導かなければならない。またシステム導入後もシステムが正しく稼働しているか、当初の目標成果を達成できているかどうかをモニタリングしていく必要がある。そのためには、プロジェクトマネージメントについて、知識、スキル、ツールや技法を身につけプロジェクト活動に適用していかなければならない。
知識はPMBOKの知識体系が代表される。また、マネージメントスキルについては、リーダーシップやコミュニケーション力や交渉力などが挙げられる。ツールや技法では、CPMやWBS、EVMなどの様々なツールや技法があり、それぞれの用途・目的に応じて活用する。それぞれの具体内容は今回省略するが、これらの知識・スキル・ツール等を活用し、プロジェクトの品質、コスト、タイムをバランスさせながら、すべてのステークホルダーが納得と共通認識ができるように推進し、プロジェクト目標を達成させることが、CIOとしての重要な役割である。

■企業の推進エンジンたるCIO
 ここまで説明してきたように、CIOは経営者とともに経営戦略を策定し、経営目標を達成するための経営課題と行動計画をまとめ、戦略的情報化の企画および実行により経営目標を最も効果的に達成することが役割なのである。まさにその推進役であり、エンジンである。そのために必要な知識やスキルを身につけるのである。
特に今日、戦略的情報化が企業にとって経営目標達成のための重要成功要因になっていることが多く、戦略的情報化の構築そのものが経営目標達成には不可欠な状況において、CIOの役割はますます大きくなっている。私達ITCは、企業の継続的発展のためにいろいろな場面で支援をさせて頂くが、まさに外部からCIO的に支援をするといっても過言ではない。ITCの役割や期待がさらに大きくなっている中で、一つ一つの企業支援のITC活動が重要な役割を果たし、ITCの存在価値と知名度を高めていくものと確信している。

  ITコーディネータ/吉村 哲也

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