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不況時の保守継続の難さ

1.テーマ選定

  『不況時の保守継続の難さ』

2.テーマの序論

 米国でのサブプライム問題を発端とした世界的不況の中で、需要の低迷は企業の変動費削減から、固定費削減にまで影響を与え、IT産業についても厳しい状況となってきており、IT投資も縮小されている状況となっています。
企業のITへの投資が削減され、IT業界も不況の影響を受けており「IT専業ベンダーのやむ終えない事業清算」、「親会社の倒産による子会社IT事業清算」も見受けられるようになっています。

はじめに
 ITベンダーの事業清算により、既に顧客へ納入されている業務システムの保守継続が出来ない状況が見受けられるようになっており、中小中堅企業での「保守継続が大きな課題となって来ている」と思います。また、普段、事業継続のために必要不可欠な業務システムを支える「保守の継続」に与える環境の変化が、システムを導入している企業にどのような影響があり、エンドユーザの負荷について議論がされるケースが少ないように思います。

本 論

 ある大手企業の、従業員向けに「多種多様な商品を販売」と「福利厚生」を担当するX社で販売管理の導入を検討され、導入の目的として取扱商品が「酒類、旅行、書籍、薬、燃料、コヒー、売店販売、斡旋商品」と多種にわたり、これらをひとつの販売管理パッケージで実現したいと管理部門の要望があり、適用率が高い販売管理パッケージの検討を行うこととなった。

管理部長の指示で、それぞれの商品担当者を中心としたプロジェクトメンバーにステアリング・アドバイザーとして情報システム部門を含めたプロジェクトを立ち上げ、販売管理パッケージを選定するため以下の手順で確認・整理を行うこととした。
  手順-1 各担当部門の業務処理手順の確認と整理
  手順-2 情報システム部門による、共通業務と固有業務の確認と整理
  手順-3 新システムの業務処理の可視化
  手順-4 新システムの方針決定

 プロジェクトがスタートした4ヵ月後に、各部門の業務フローを基に情報システム部で作成された、「共通業務」、「部門固有業務」に分類され、各部門の要求事項が盛り込まれた、「用件定義書」が完成した。
情報システム部は、パッケージベンダー数社にRFPを提示しパッケージの提案とデモ見学を行い、最も適用率が高く、各部門の要求機能を満たすパッケージベンダー A社を選定し、各部門担当者、管理部長へのデモと説明会を実施しA社のパッケージを導入するとの了承をえた。
ただし、パッケージの取引先コードの桁数、商品コードの桁数、金額の桁数が不足しており、パッケージの桁数を拡張することで、パッケージの変更をA社が6ヶ月を掛け実施することとなった。
その間に情報システム部門が中心となりマスター登録のデータ整備と運用教育を行うこととなった。また、ホスト・システムとの連携部分と各部門固有の機能については自社開発を行うこととした。

 6ヶ月後、パッケージが納入されマスター登録と自社開発の機能を含めて2ヶ月のテスト期間を経て本番稼動をスタートした。
本番開始後に、一部の画面と帳票で表品名の桁落ち、金額の桁落で金額が異常値となる不具合が発見された。
X社の情報システム部門は、A社に対して桁数を拡張した際の検証テスト不足でありパッケージの品質改善と未発見の不具合の有無について確認と修正の要求を行った。

検証テストで不具合が発見されなかったのは、実データを用いたため桁拡張の確認がされていなかった事が判明し、X社のテスト方法の問題はあったもののA社の出荷品質の問題が大きいとの結論にいたった。
A社は、納入したパッケージの検証テストを2ヶ月掛け実施したところ、拡張した桁数に係わる不具合が約140件発見されたことの報告と、不具合修正計画を情報システム部に提示を行った。
X社の情報システム部と管理部門は、保守契約で定められた保守費を280万/年を免除を条件にA社の計画案を承認し、A社は修正作業を開始した。

 修正を開始した2ヵ月後に、A社より民事再生を申請しERP事業をB社へ譲渡することを連絡してきたため、情報システム部はB社へ連絡をとり不具合の修正継続と保守継続が実施されることを確認し、A社からB社への保守契約切り替え手続きを行った。
B社は、A社からの技術者を受け入れており不具合修正計画通り実施していた。
4ヶ月後にB社が60項目の不具合修正版のリリースを行った直後に、B社との連絡が取れなくなり、その後、新聞記事にB社がC社に事業譲渡したとの掲載されていたため、情報システム部門が確認したところ、確かにB社からC社に事業譲渡され「負の資産は譲渡されずB社に留保」されており、譲渡対象である顧客資産のうち、X社については譲渡に含まれておらず、B社に留保されていることが確認できたため、情報システム部が、B社へ連絡を試みたがB社との連絡が取れない状況であった。
そこで、情報システム部がC社へ保守契約を依頼するために連絡を取ったところ、「C社は事業譲渡は受けたが、技術者の受け入れは行っておらず、技術対応は困難であり、B社の技術者もすでに離職し連絡もつかない状況となっている。」との説明を受けた。
システム部としては、不具合修正と保守継続を行う必要性があることから、C社と交渉しなんとか、運用上の問合せについて保守契約を行うことが出来た。
不具合については、運用で回避することで業務を継続を行うこととした。C社との保守契約後6ヶ月が経過したところで、C社の親会社が民事再生の申請を行ったため、100%出資会社であるC社も事実上、事業活動を停止する事態となり保守契約も自動解消となった。

X社の情報システム部では、不具合修正が出来ないこと、予定していた機能強化も今後見込めないことから、以下の制約条件を踏まえて対応方法の検討を行うこととなった。
  (1) 導入パッケージは、不具合はあるが運用で何とか回避できている。
  (2) 自社開発システムは、約60人月の工数が掛ったため変更はしたくない。
  (3) ユーザ部門も、導入時に掛かった用件定義の時間を再度割くことは難しい。
  (4) パッケージの中身については自社で修正することはできない。
  (5) ハードウェアの保守期限は2年後に迫っている。
  (6) ハードウェア入替時には、オペレーティングシステム、データベースのバージョンアップが必要。

これらの制約条件を踏まえて、情報システム部は次の案を検討することを、管理部門に報告を行った。

  (1) 現在のパッケージで運用を行う。(短期)
  (2) 新たな候補パッケージを検討する。(長期)
  (3) パッケージのデータ構造を利用しアプリケーションを新規に構築する。(長期)
  (4) C社から、著作権を取得しパッケージ保守を自社で行う。(長期)

 報告を受けた管理部門からは「投資額の回収も出来ていない」、「需要の低迷で売上も落ちており時期もよくない」とシステム部門に対して説明があったが、
システム部門としては、短長期の視点でハードウェア保守期限である2年後をひとつの目処として方向性だけでも決めておく必要があると管理部門に説明を行った。
これに対して、管理部門からは、予算稟議が12月~1月のため導入作業期間を考えると、直ぐにでも検討を行う必要がり、早急に対応策、コスト、期間、範囲、影響度について纏める様にシステム部門に要求した。
システム部門としては、低コストで現行と同等機能の販売管理システムの短長期の対応方針を纏めることとなった。

幸いにも、桁数による不具合発生件数はまれに発生する程度であり、発生した場合はホスト・システム連携で毎日データチェックで異常値チェックを行っており、金額の異常値は検出できる状況であり、パッケージのプログラム障害で業務が停止に至る現象は今のところ発生していない。

 

このような、状況となった企業にどのように助言を行う・・・・・・あなたならどうする!

本件、の事例は現在進行中の事例です。
以上、
ITコーディネータ
 三谷浩一

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