まいどフォーラム

ITコーディネータによる中小企業の企業内IT支援は、まいどフォーラムにご相談ください。


投稿

HOME > 投稿 > 営業活動の本質とは何か

営業活動の本質とは何か

1.はじめに

営業とは何か? 何をすることなのか?

こう問いかけられて、「何を今さら」と思われる人も多いことでしょう。しかし、営業の仕事を志す人、営業で行き詰まりを感じている人、など様々な立場や置かれた環境、状況の変化などの契機にあるとき、営業と関わりを持つ人であれば「営業とは何か?」と考えることがあるのではないでしょうか。

書店で営業に関する本を紐解いても、営業ノウハウや心構えについて書かれた本が大多数です。それを読んで、何か本質を飛ばしていきなりHOW TOに立ち入っている感覚を受けるのはわたしだけでしょうか。

MBAの定義によると、営業とは『継続的に利益が出るようにモノ・サービスを売る行為』(注1)とあります。しかし、この定義にも不満を感じる方も多いのではないでしょうか。定義は正しいと仮定しても、「では、『売る』ために営業は何をすればいいの?『売る行為』とは言い換えると何なのか?」というのが次に出てくる質問です。

上記のような出発点から、本書では、営業とは何か?との問いに答える解を考察し、まとめてみました。

(注1)戦略営業/グローバルタスクフォース㈱著/総合法令出版㈱

2.営業活動の分類

本論に入る前に、営業活動の分類に少し触れておきます。

店を構えて、店に来られたお客様に商品を売るのも、一般的な営業行為です。この場合、客は自らこちらへ来てくださいます。そして、店先で商品を選び、購入して戻って行きます。このように、顧客の方から訪問してくれるのを待つスタイルの営業を、本書では「受動的営業活動」と呼ぶことにします。ネットショップもこの分類に入れます。受動的営業においては、こちらは商品を陳列棚に並べるところまでをします。その後は、客が来て商品を選びます。

一方、新規や既存を問わず顧客を次々に訪問して回るルート営業、御用聞き営業のように、こちらから顧客を訪問するスタイルで展開する営業活動を「能動的営業活動」と呼ぶことにします。能動的営業では、客のところに出向いてニーズを探り、案件を発掘し、モノ・サービスを売ります。

このような分類を行う理由は、具体的な営業活動を表現する時に実際の行動が大きく異なるからです。言うまでも無いことですが、受動的や能動的という表現に優劣に意味を持たせる意図はないことをお断りしておきます。

3.顧客から情報を集めること ~営業活動の本質 その1~

営業とは何か? 何をすべきなのか? この本質についての最初の答えは、顧客から情報を集めるということです。

受動的営業活動であれば、客がどんな商品を好んで買うか、どの時間帯にどんな商品が売れるか、などの情報を集めることが営業の仕事です。そして、どんな商品をどの棚にどれだけ棚に並べれば機会損失無く最大の売上げを上げられるか、その情報を店のレイアウトや仕入れ、製造に活かすことで売上げに貢献します。

能動的営業活動であれば、顧客がどんな最終製品を作ろうとしているか、どんな設備投資を計画しているか、顧客の事業に変化が起こるのか、顧客がどんなことで困っていてこちらが提供するどんなサービスであれば買ってくれるか、そもそも顧客企業が黒字で何かを買うことができるのかなど、情報を集めることが営業の仕事です。自社の製造部門や工事の実行部門が提供できるモノ・サービスを買おうとしているという顧客の情報を集めることです。顧客が設備投資を行うために予算取りをするために見積協力をしてくれるベンダーを探している、といった種類の情報もあります。入札になるのであれば、競合他社情報を集めることもあります。客先のキーマンが誰か、という情報もあります。しかも、このような情報を客先へ出かけていって対面の窓口から引き出してこなければなりません。さらに、2社間の問題、中長期を見据えた様々な仕掛けが将来必要とされるなら、そのためのチャネル作りができる相手情報、上層部から情報を取れるようなチャネルを作ることもこの分野の活動です。

様々な企業の営業部門は、突き詰めると、このような情報を集めるために日夜活動しているのです。そして、集めた情報を自社内に活かす仕組みを持つ必要もあります。集めた情報を活かせるように常々整理すること、情報を分析しておくことを欠かすことはできません。営業活動の本質として。「情報を集めて活かすこと」は一つの明快な解ではないでしょうか。

4.顧客へ情報を伝えること ~営業活動の本質 その2~

営業とは何か? 何をすべきなのか? 2番目の答えは、顧客へ自社の情報を伝えることです。やはり、情報に関係があります。

受動的営業活動であれば、新製品の情報、付加的なサービスの情報など広告宣伝を有効に行うことがこれに該当します。ネットショップであれば、ホームページの模様替え、顧客を網羅するメールリストを持つこともあります。提供できる商品情報を顧客にうまく伝えることにより、購買意欲を高め来店者を増加させます。

能動的営業活動であれば、自社にどんな能力があり、現在は買われていないどんなモノ・サービスを提供できるかを、顧客に伝えます。技術開発の成果を伝え、他社よりも優れている強みを訴え、商談を自社に有利に進められるようにします。あらかじめ仕入れた顧客情報を分析して、伝えるべき情報の中身や訴え方を工夫し、伝えるべき相手や役職を選び、ビジネスに結び付けられるように情報を伝えます。

自社内からは内部情報が営業部門へ適正に流されるような仕組みを構築してあることを前提に、適切な情報をタイミングよく、工夫された形で、適切な相手に伝えること、これももう一つの明確な解ではないでしょうか。

5.優秀な営業マンとは

このように営業活動の本質を定義してみますと、優秀な営業マンを志す人であれば何をすべきか、どうあるべきかが自ずから見えてきます。

受動的営業活動に従事する優秀な営業マンであれば、上述の情報が集まる仕組みを考えるはずです。そして、それを製造や仕入れなど自社の他部門に上手に伝えるはずです。また、顧客への広告宣伝に関心を持ち、そのための仕組みも構築していくでしょう。

能動的営業活動に従事する優秀な営業マンであれば、顧客を訪問しつつ自社の事業に有用な情報を集め、社内の意思決定に反映させて行きます。また、自社の情報の中から何をいつ顧客の誰に伝える、いつでも多くの玉を持って行動に移すでしょう。

企業の管理面では、営業マンの評価をこの視点から行うことができます。情報収集能力と情報伝達能力です。各社での事業の形態や業務プロセスは様々に異なるにしても、営業部門でのKPI(Key Performance Index)の設定にこの概念を用いることができるのです。

5.まとめ

営業とは何か? 自ら考え続けて得た二つの解を本稿で示しました。ある意味で抽象的ではありますが、営業に関わる多くの「HOW TOモノ」で強調されることの少ない観点を含んでおり、かつ抽象的ではあっても具体的な適用に展開しやすい見方ではないかと思っています。営業活動に携わる皆様に、何らかの新たな展開へのヒントとなれば幸いです。

ITコーディネータ 松下 悟

このページの上へ



『経営に活かせるIT』と『ITを活かした経営』の橋渡しは‥‥まいどフォーラム