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グループビデオが変えるコンサルタントのワークスタイル

2011年に入り、Skypeの「グループビデオ通話」機能を活用したITコーディネータ等による「チーム・コンサル」が現実的に運用可能になってきた。この有用性を検証したい。
 無料インターネット電話のSkypeには、Windows版、MAC版、Android版‥‥等、さまざまなプラットフォームがあり、それぞれバージョンアップの時期が異なるため、普及期を明確にするのは困難なのだが、2010年10月のバージョン5.0ではβ版であったグループビデオ機能が、2011年1月には有料とはいえ正式対応となり、Windowsパソコンでいとも簡単に5~6名のグループビデオ会議を実施できる環境が整ったので、その頃から日本国内でも普及期が始まったと見てよい。音声だけならもともと無料のサービスであるし、グループビデオについてもコスト負担はほとんど問題にならないレベルである。

 グループビデオ会議は、距離の離れた場所に勤務もしくは在住する参加者が、交通費を払って移動に時間を割いて集まる負荷をゼロにする。音声のみの会話と、顔の見えるビデオ会議では、その臨場感が決定的に異なっているために、本当にわざわざ集まる必要があるのかないのかを真剣に検証する価値が十分にあるのだ。
 複数の事業拠点を持つ企業であれば、それぞれの責任者を集めた全体のミーティング等に即活用でき、移動コストの劇的な削減につながる。集まれる者だけが集まって、特に遠隔地の者や多忙を極める者はスカイプで参加というような柔軟な運用がなされるはずである。またある者は外出先からスマートフォンのスカイプで参加することもできるし、音声のみでの参加者が混在していてもかまわない。

 このように画期的な「IT文明の利器」のもたらす利便性をもっとも享受する職業のひとつが個人事業型のコンサルタントではないだろうか。特に職業人としての独立系ITコーディネータは、スカイプを自己の強力な武器にすることを検討すべきである。自分の体が最も貴重な経営資源であることを考えると、物理的な移動やペーパー資料の準備に時間を費やす余裕はないからである。自分の事務所は大阪にあるが大切なクライアントは東京に多く、毎週のように新幹線で行ったり来たりで心身共に消耗‥‥といった例はいくつも耳にする。
 ITコーディネータは、IT化を推進するという大義の下、アナログ族からの反発を受けにくいというアドバンテージを持っていることを考えると、他分野のコンサルタントに先がけて、スカイプ活用の範を垂れてしかるべきとも言えるのだ。1つしかない体を、2つにも3つにもするような仕事のしかたができるのだから。

 ではどうすれば、ビデオ会議を、実際に集まるリアルな会議のコミュニケーション濃度に近づけていくか、考えてみよう。想定されるシチュエーションは、反復継続的な少数グループの対面セッションである。初めて会う相手でもなければ握手できないことやことは問題ではない。コーヒーを出さなくてもよいのはかえってメリットだ。‥‥というのは脱線として、いちばん大きな差異は、ディスカッションに必要なペーパー資料を目の前に並べて手にとって即時共有するという臨場感である。立体的な製品に触れる必要があるだとか、味や臭いに関わる商品のプレゼンだとか、五感に広がる議題となれば、やはりそれなりの場に出て行かなければならないかもしれない。しかしそういう障壁をなんとかしてきたのがITの技術である。なんとかしてクリアすることができてこそのITコーディネータなのである。

 ペーパー資料を相手と共有するためには、パソコンのソフトで作成したファイルをメールに添付するという原始的な手段もあれば、PDFにしてFTPでサーバにアップしたものをダウンロードしてもらうとか、ストレージサービスを利用するとか、参照してほしいウェブサイトのURLを整理しておくとか、さまざまな方法が考えられる。嗅覚や味覚はあきらめるしかないが、視覚に訴える表現力を向上させるために写真や動画をネット経由で相手に見せるノウハウは必須である。重要機密事項や個人情報をネット上でやりとりするとなると、若干高価なセキュリティ機能のついた有料データ共有サービスを使う必要も出てくるだろう。
 しかし、逆に考えれば、これらのハードルを越えることができれば、否応なく双方のITリテラシーが磨かれることとなり、ほとんどすべての情報がはじめから最後までデジタルメディアとして行き来し、ストックされることになる。ゆえに、マクロで見た際のプロジェクト効率は、アナログベースなものに比べて何倍も上がっているという結果を得る。いろいろな意味でエコでもある。

 さらに特筆すべきは、昨今普及しているソーシャルメディア活用による、小グループでのドキュメント共有──というより共同編集──である。2010年までは、スカイプで音声のみのグループ会議を行う際に、「googleドキュメント」のようなクラウド型ドキュメント共有サービスを併用していた。これはあたかもリアルな会議におけるホワイトボードが全員の手の届くところに置かれているように、参加者それぞれがリアルタイムに文章を書き込むことができ、全員がそれを閲覧できる。2011年に入ってからは「フェイスブック」が爆発的に普及したおかげで、そのグループ機能を使えば「googleドキュメント」よりももっと手早く、小グループの各メンバーが「顔を合わせつつも活字でポイントを確認しながら」ディスカッションを進める環境ができあがる。手持ちのPDFドキュメント、写真、動画を次々と出すことができる。散会後の継続ディスカッションも自然に進む。採決を取るときの「賛成の方は挙手を願います」に当たるものがフェイスブックではクエスチョン機能だが、全員の意見が瞬時に記録される一例である。ある意味、コーディネータのスキル如何で、リアルなアナログ会議を凌駕するコミュニケーション濃度を醸造することができるのである。

 まとめとして、個人もしくは小規模な組織で活躍するITコーディネータが、生身の経営資源を最大限に活用するために、スカイプのグループビデオ機能は打ってつけの武器であること。そのために自分が使うツール集はすべからくデジタル化し、写真や動画を駆使して表現力を高め、簡便にクライアントにプレゼンできるノウハウに習熟する必要があること。ソーシャルメディアの共時的併用でさらに演出効果が高まると認識すること。ゆえに、ストック型の資料よりもフロー型のパフォーマンスによる訴求効果を磨く方が重要になってくること。──等々がITコーディネータのワークスタイルを洗練する鍵になるだろう。

byITコーディネータ:永田ショウ造@まいどフォーラム(2011,03,26)

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