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営業活動初回訪問での障壁排除について

ソリューション営業活動の初回訪問での障壁排除について

【はじめに】
営業支援技術と云う言葉は、はじめて聞く方もおられるのではと思います。
私の勤める会社では、この営業支援技術と云う位置づけは既に撤退をした大型汎用機時代に自社コンピュータの構築技術と業務知識を持ち営業と共に、お客様への提案、受注後のソフトウェア開発、導入支援を行う技術者を指して「営業支援技術」と呼んでいます。
営業からの依頼や、営業パートナーからの依頼で、お客様を訪問した経験から受注活動におけるベンダーの立場として、どの様に受注活動を行ってきたかを反省を含めて「提案時の障害排除」と云う視点で整理することで、後輩諸氏の参考になればと思います。

1.序 論
営業は、客様を拷問し自社の製品を紹介し購入して頂く事で、自分に与えられた販売目標を達成することが仕事であり、限られた時間で効率よく目標を達成する必要があります。
そのために、初めて訪問したお客様との商談をどの様に進めればよいのかを述べて行きたいと思います。

2.初回訪問における障壁の排除について

【相手の理解】
相手の「立場」、「職制・役職」、「役割」、「与えられた権限」を理解することで、相手の「心配(障壁)、不安材料」が何処にあるのかを想定することで、相手の「不安(障壁)」を順次排除を心掛ける。

【障壁の例】
・当社と付合うことの不安・・・・・特に初めての場合、導入実績の無いベンダーへ任せることの不安、信頼できる「人間関係」の無い事が不安要因です。
・導入システムへの不安・・・・・・ベンダーの紹介パッケージが本当に問題なく自社の仕組みの中で動くのか動かなかったときの責任に対する不安。

【ベンダーで、よくある悪い例】
●当社に任せていただければ実現できます。
●何でもできます、何とかします、できないことはありません。
この例は、「顧客の不安要因(障壁)を全てベンダーが引き受けた」ことになります。
顧客にすれば、今後発生するいかなる問題も「当社が責任を持って解決します」と宣言したものとして解釈されます。(当社の「リスクの背負い込み」となります)
これは、システム構築段階に入って大きな問題となって表面化します。
●こんなパッケージは如何でしょう。
よくある訪問パターンですが、この場合顧客から「これの価格は?」と質問を受けることがありますが、この時点で顧客の頭には「他のベンダーでは幾らだろう?」と考えます。この時点で競合と価格競争へと突入する可能性が高くなります。
顧客が「価格は?」を問う前に「価格」の意識を排除することがポイントとなります。

【初回訪問における障壁排除】
初回訪問で具体的な引合がある場合
面談において、情報システム部門、現場部門、その両方の場合があります。
どちらの場合であっても、相手を研究すること(業種、業務、商品、経営目標、認証・・・・etc)
訪問にあたって目標(当社、顧客へのアウトプット)を想定すること

(1)現場部門の場合
システム導入に当たって、何らかの形で社内から指示を受けシステム導入を検討していると
考える。
検討に至った、経緯、目的を聞くことからスタートし、「発生している問題」、「解決すべき課題」を聞き出すこと。最良のケースは、現状の定量値と改善目標の定量値が聞ければ、初回訪問の目的は達成したと考えてよい。
≪ポイント≫
①当社のスタンスを明確に紹介すること(別紙を参照)
②当社がお客様と一緒になって課題を解決してゆく会社であることを認識してもらうこと障壁排除:担当一人で具体化することの不安を排除、仲間ができたことの安心感
③現状と改善目標の定量値の差が改善効果、すなわち投資です。

(2)情報システム部門場合
大半の情報システム部門は、企画部門や現場部門の要求を受けシステム導入の検討を行っているケースが多く、現場の問題点、改善課題そして投資予算を正確に捉えていない場合が多い。
この場合の情報システムの役割は、多くのベンダーに対してRFPを発行し安くシステムを導入すること、導入システムの責任はベンダーとすることが仕事と捉える。
打合せの中で、トップの情報システムに対する「要望」、「期待」、「情報システムのあり方」に関する情報が入手できれば初回訪問の目的は達したと考えてよい。
≪ポイント≫
①情報システム部は「導入システムの決定権」をもたないことを前提に考えること。
②情報システム部がエンドユーザへ説明できる情報をできる限り提供すること。
③情報システム部は導入後の運用が主体であることを前提に考え運用・サービス面をアピールすること。
障壁排除:情報システム部の現場に対する不安要因の排除
導入システムおよび現場運用を含めた情報を提供することで、当社が実務に詳しい会社であること、相談できる会社であることによる安心感を醸成する。

(3)現場、情報システム部門が同席の場合
情報システムはアドバーザー的な位置付けで出席していると考え、現行システムと現場が要求しているシステムのインテグレーションがまず第一と考えている。
現場部門は、情報システムの知識が少なく現場で解決すべき課題をどのようなシステムで解決できるかを期待しているが、情報システム部門からは明確な回答は得られていない状況が想定される。
現場部門の「解決すべき課題と定量値」の情報入手、情報システム部門との良好な人間関係が築ける様にすることができれば初回訪問の目的は達成したと考えてよい。
≪ポイント≫
①現場部門に対しては、「発生している問題」と「解決すべき課題」を中心に説明
②情報システム部門には、当社が「現場部門との橋渡し役」であることを理解してもらう
③現場部門と提案書の素案を作成し、情報システム部門が提案書をまとめた形を三者合意の上で行う。
障害排除:情報部門、現場部門の意識の違いによる不安要因の排除現場担当者とまとめた提案書を現場部門の上司に情報部門と当社が一緒に説明することでの実現性への安心感

3.初回訪問で商品を紹介する場合
訪問において、情報システム部門、現場部門、その両方の場合があります。
どちらの場合であっても、相手を研究すること(業種、業務、商品、経営目標、認証・・・・etc)訪問にあたって目標(当社、顧客へのアウトプット)を想定する。

(1)現場部門の場合
当社からの商品紹介説明で面談を了解頂いたことから何らかの問題・課題があると想定し、面談相手の職制に応じて「問題意識」や「社内テーマが与えられているか」を探る必要があります。

≪ポイント≫
①問題意識を探る場合、個人的観点、職制の観点を混同しないようにする事個人的観点での問題は、組織面から見て問題とされないが、職制での問題点は「課題やテーマ」として認識されていると想定される。
②職制での問題・課題が認識できたら、面談相手がどのように関与しているかを確認すること
・面談者が具体的に職制で関与している場合は、現状の定量値と改善目標の定量値を確認すること。(具体的な引合へ持ち込むことが可能)
・面談者が具体的に職制で関与していない場合、すなわち権限をもたない場合は客先社内の「目標管理」、「改善委員会」などの制度の有無確認と、問題・課題が面談者のテーマとして取り込むことができるか確認する。(長い引合活動となる)
・ 面談者が全く関与していない場合は、丁重に引上げること。(望み薄い)

(2)情報システム部門場合
まず、当方からの商品紹介説明であり面談を了解して頂いた背景を探ること。
①現場部門からの要請がある場合、あるいはRFIの一環である場合
②トップからの要請がある場合
③勉強のための情報収集
情報システム部門自身で新しいシステム導入を検討しているケースはまれで、上の3つのケースが殆どで、それによりアプローチ方法が異なります。
どの場合であっても「緊急度」、「重要度」、「計画」の3つに分類する必要があります。
≪ポイント≫
①のケース:検討段階であると想定され、具体的な予算、実行時期は明確になっていない。
②のケース:具体的に検討され、実行時期も明確になっており投資予算も具体化されている。
③のケース:紹介商品を具体的に検討すべき部署・担当者を紹介していただく①②の場合は、商品の説明を行い次回訪問を約束しエンドユーザ部門の同席をお願いすること。

(3)現場、情報システム部門が同席の場合
具体的な検討段階にあると考えられますので、進め方については慎重に行う必要があります。
ここで、当社に「欠点」が付けば商談の継続はありませんので、表向きは商品説明ですが現場部門の「問題点と課題」を聞き出すことが重要になります。
何故なら、課題解決が先にあって「こんなシステムが必要」の発想になっていることを想定した場合、単なる商品説明では顧客は「問題解決へ結びつける」ことができない可能性があります。
≪ポイント≫
①まず、「発生している問題」と「解決すべき課題」を認識すること
②認識した「問題」と「課題」を解決するために紹介商品が有効であることを説明(事例)
③現場部門と提案書の素案を作成し、情報システム部門が提案書をまとめた形を三者合意の上で行うこと
障害排除:情報部門、現場部門の意識の違いによる不安要因の排除  紹介システムが有益であるか否かの不安要因の排除、現場担当者とまとめた提案書を現場部門の上司に情報部門と当社が一緒に説明することでの実現性への安心感。

【定量値の認識について】

定量値は、課題の解決に当たっての改善目標の具体的数値ですからソリューションビジネスを行うに当たっての重要な要素となります。改善の目標値が、顧客内の「稟議決済」、「予算申請」の顧客の担当者が稟議を上申する再の説得材料となるからです。従がって、顧客の問題点が次の5つのどの分野であるかを認識すること
①Salse(販売)
②Cost(コスト)
③Quality(品質)
④Delivery(納期)
⑤Plofit(利益)

(例)顧客の課題が「コスト削減」であった場合
(1) コスト削減がどのレベルで対応が可能なのか想定する事(在庫、リードタイム、品質など)そのためには、顧客の業務に関する現状認識を行う。
・現場部門と関連する相手・部門を確認する・・・・(営業、購買、顧客、品質など)
・関係する相手・部門との情報・物の流れ・・・・・(受注情報、発注情報、検査情報など)
・取扱い商品の種類の確認・・・・・主力商品、出荷量、売上高、ピーク時期など
・取扱い商品量の確認・・・・・・・月産量、日産量(多いとき、少ないとき)
・問題の定義・・・・・受注から納品まで過程でのボトルネックを探る

定量値を最初から提示してくれる顧客はいないと思います。
もし定量値を最初から提示できる顧客は、相当のレベル(CMMの4レベル以上)と考えられますからそれなりの対応が必要となります。
また定量値については、情報システム部門では把握していませんので現場部門との打合せが必要となります。私が長年の営業支援活動で経験した事の基本的な行動指針になります。現在でもこの考え方で上手くお客様と接する事ができていると思いますので、参考にしていただければと思います。

4.最後に
皆様は当たり前と思われるかも知れませんが、事項について案外意識されていない事がありますので改めて意識されてはいかがでしょうか。
(1) 事業には課題が存在する、課題には必ず問題がある。
(2) 戦う相手は誰か?
(3) 戦う領域はどこか?
(4) 戦う武器はなにか?
(5) その戦い方は?
(6) その戦いの結果は?     ・・・・短期・中期・長期で
(7) 何を解決するために戦うのか?・・・・提案するソリューションで何を解決するのか

私の経験から、「何を解決するのか・・・・」が忘れられている事が多いようです。
よく、「課題を解決します」と云う人たちがいますが、ソリューションでは課題解決はできないと考えています。なぜなら課題は複数の問題の集合体であり、「ひとつのソリューション」で複数の問題全てを解決する事はできない。
例えば、課題が「コスト削減」であった場合、提案するソリューションでお客様がコスト削減が必要と感じているかを因数分解しx、yが何なのかを考えて、ソリューションを提案する必要があります。

お客様とのコミュニケーションについては、引合段階や提案説明を行う場合に最も注意しなければいけないことは、「お客様と確実なコミュニケーション」が取れることです。
そのためには、相手に通じる言葉で会話すること、相手の考を理解したことの確認、当方の考えが確実に伝わったことの確認を確実に行う必要があります。

(1)相手に通じる言葉で会話
こちらの業界用語、専門用語は極力使わないこと、特に三文字用語(SCM、CRM、ERP・・・等)についてはお客様と当方の考えが一致していると判断できる場合を除き使用しない、お客様の理解できる言葉に置き換えて話しを進めること。
(例)たとえばSCMといった言葉に対して何をイメージしているのか、SCMへの期待値は何なのか、SCMの言葉に対する定義が違う為のために後々大きな誤解を招くことになります。必ず最初にSCMの言葉についてお客様の認識、期待値を確認し、お客様に通じる言葉をベースに会話を展開すること。

(2)相手の考を理解したことの確認
お客様からの説明を受ける場合には、お客様の説明が当方が理解できたことをフィードバックして確認をする事、またキーワードについては意味・内容について当方が「この様に理解しましたが間違いありませんか?」と確認をすることが必要です。
この確認に当たって、「当方の思考・考えに置き換えた意味に翻訳」し確認をすること。
(例)在庫という言葉の場合・・・原料在庫、仕掛在庫、製品在庫・・・があります。
売上・・・・営業での売上、工場での売上、経営での売上・・・意味が違います。
(3当方の考えが確実に伝わったことの確認
(2)項の確認とは逆に当方の説明が確実に相手に理解されたかを確認する必要があります
このためには,「相手に通じる言葉」で具体的に意説明する必要があります。
(例)「今、言われた在庫とは製品在庫のことと理解させて戴いてよろしいですか?

≪説明の三階層≫
説明に当たって説明したい内容を、当方が伝えたい相手に合わせて理解してもらえる説明をする必要があります。
(例)
情報システム担当者・・・・このパッケージにこの部分をカスタマイズ、追加すれば要求されている機能を満たすことが出来ます。
現場部門担当者・・・・・・このパッケージにこの部分をカスタマイズ、追加することで、工程進捗が把握でき、仕掛在庫の調整(削減)が実現できます。

決済者・役職者・・・・・・このパッケージを利用することで御社の現状から見てリードタイムが5%程度、仕掛在庫を20%程度は削減を見込むことが可能です。

この様に、相手の職制に応じて相手の制約を考慮し、理解がしやすい形で相対する事が重要です。
長々と書きましたが、相手の職制、立場、与えられている与権をコミュニケーションを通じて認識することで提案の進め方や、対処法が見えてくると思います。

以上、

ITコーディネータ
三谷 浩一

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