はじめに
日本のアパレル小売は総じて低迷していると言われる中で、H&M(注1)などに代表されるファストファッション企業やUNIQLO(注2)に代表される低価格で高品質な商品を提供する「ブランド」の企業業績は、消費者からの支持を受け堅調に推移しております。
アパレル商流を研究されておられる識者の方からは、一方的な分類の仕方であるとご叱責があろうかと思われますが、当論文では物流目線からの簡便な分類を指向し、百貨店・卸の販売チャネル(以降百貨店型)向けとファストファッション型と呼ばれる二つの業態をモデル化してモデル別に販売特性が違うことを記述し、その物流プロセス、物流要件の考慮点について考察を行います。
商材特性の分類と整理
両者の商材特性についてはあくまでも一般論ですが、百貨店型アパレル商材はファッション性を追求し比較的商品単価が高く、大量販売するのではなく決め細かい店頭へのフォローで売上を伸ばすことが求められます。これに対してファストファッション型はファッション性の高い商品を低単価で大量に販売するビジネスモデルだと言われています。
もう少し詳しくみてみるとファストファッション型は自社で商品企画・調達をし、直営店で販売するビジネスモデルで、発注段階で店頭への初回配分予約数が設定される場合が多く、初回投入はこの配分予約数に従って出荷され、初回以降はフォロー投入していきます。よって、店頭フォローのため売上からの自動補充投入とSKU別のきめ細かい配分出荷指示の両面を備えることが必要です。百貨店型のアパレル企業による百貨店取引も、消化「売仕」取引(店頭で販売した時点でアパレル側も売上計上)が多く、百貨店の店内ではありますがアパレル会社により店頭管理をしますので、店頭での売上、在庫管理については、直営店と同じ考え方と言えます。
物流プロセスと物流業務の特徴
百貨店型は中国生産分に加えて国内生産、欧米からの輸入など様々な調達ルートがあります。検品・検針は生産国で行って済ませることが大部分ですが、最後の関所として日本国内センターで検品・検針を行う場合も多い。日本国内での物流倉庫は、保管型タイプで初回投入以降は在庫より店頭消化動向よりきめ細かく追加フォロー投入をしていくパターンが多い。1単品(品番・サイズ・カラー:SKU)の生産数は多くなく、入荷時全量スキャン検品で在庫精度を高めるとともに、出荷時のピッキング時も全量スキャンで物流精度を追求しつつ、販売ピーク週の出荷キャパの拡大という対応が求められます。百貨店荷受場で万一個口割れをしていた場合は、全量が入荷検品できずに止まってしまうケースがあるので、1梱包1伝票としておくことも重要です。
これに対してファストファッション型は、1単品当たりの生産数が多く、また、海外生産工場で大量に生産される場合が多い。生産国側で検品・検針が必須であり、良品(A品)のものだけを日本国内に入れるような検品物流体制が必要です。量とスピードが求められる物流であり、海外出荷のASNデータを入荷検品で活用、ケース単位での入荷処理または、配分出荷での過不足分訂正から入荷計上を出荷計上の際に行う、など物流センター内で作業をシンプルにするプロセスが不可欠となっています。入荷して即日出荷する場合でも初回で全量投入することもあるが、フォロー品のための保管スペースが必要です。店頭販売分の自動補充する仕組みが必要なことは前項でも述べましたが、安全在庫を設けて補充するような定番商品もあろうが、ファッション特性を考慮した配分ロジックで売れた数に対する補充をダイナミックに行える機能が必要です。物流設計の根本である通過型の物流か保管型の物流かの指向はクライアント様企業により微妙な違いがありますので、両者の構成度合いを十分に押えることが必要です。
物流設計について
まず、基本となるビジネスプロセスを洗い出し、お客様が実現したいビジネスフローを作成します。これにより百貨店型かファストファッション型かを見定めます(この分類以外に量販型などがありますが)。配分出荷の基本フローを把握し、クライアント様の意思を十分に理解します。入出荷量を確認し物流規模感を把握します。一日の時間軸でタイムスケジュールを確認します。納品書、値札、送り状のルールを決めます。倉庫内業務フローを作成し、データのインターフェイスを定義します。運用要件を含め文書化します。現場要員を入れて机上でのシミュレーションを行い物流業務設計で問題、モレがないかを確認をします。設計ドキュメントとしては、物流業務フロー、作業手順書、タイムスケジュール表、月間イベント管理表、インターフェイス要件仕様書、帳票類、伝票、タグ、値札の要件仕様書、運用要件書などを整理してクライアント様と確認、合意します。各工程の生産性推定から、必要要員数を洗い出し、体制と物流コストを算出しておきます。
物流システム利用からみた確認事項
前述の物流業務設計を物流業務要件として、物流システムとのフィット・アンド・ギャップを行います。確認事項はマスター類のインターフェイス定義、コード体系に問題がないか、入出荷、移動、返品で発生するデータ量からみて、端末、プリンター、ハンディターミナル台数、サーバー容量などのシステムスペックに問題がないか、入荷処理、出荷処理、返品処理などの例外事項、緊急出荷対応、についてはシステムを使用しないで、現場対応をする場合が想定されますので、そのフォローのルールについても決めておきます。
万一システムが利用できない場合の運用代替策もシステム停止の原因と停止見込み時間にて、対応策のバリエーションを用意しておきます。
まとめ
以上のようにアパレルの代表的な2つの業態を例に商品特性を整理し、必要とされる物流要件を洗い出しシステム適用について整理をしました。最適な店頭在庫を維持していくこと(欠品を作らない、適切な配分投入が行われる)を支援できる物流でなくてはなりません。そのため、店頭情報や物流情報とスムーズに連携した本部商品管理システムがあり、タイムリーで適切な物流出荷指示ができること、在庫精度を維持したうえでスピディーな物流処理が実現できることがアパレル物流では不可欠なことだといえます。
注1:ヘネス・アンド・マウリッツ(Hennes & Mauritz AB, ヘネス・アンド・モーリッツとも表記される)が展開するブランド。
注2:株式会社 ファーストリテイリングが展開するブランド。
ITコーディネータ 久保茂樹